2026.05.20/Wed 最終更新日:2026.06.02/Tue
採用ブランディングとは?欲しい人材と出会い、強い組織をつくる|工務店・不動産会社のためのブランド知識④
目次
▶ この記事はブランド知識シリーズの第④弾です
1,数字で見る採用難の現実|工務店・不動産会社が直面する構造的課題
人手不足が深刻化している日本では、採用市場も年々厳しくなっています。
工務店・不動産会社の発展には人材確保が必須となり、厳しい状況の中でも自社にマッチした人材を確保するために、戦略的な採用計画を立てる必要があります。
しかしこれは、単なる「採用活動の強化」で解決できる問題ではありません。複数の調査データが示すように、工務店・不動産会社を取り巻く採用環境は、構造的かつ長期的な課題として深刻化しています。
建設業界の現状
2027年卒を対象とした建設業の新卒求人数は12.8万人と過去18年で最大となり、求人倍率は約9.95倍に達する見込みです(全業種平均1.62倍)。
また、職業別有効求人倍率(2026年2月)では、上位5位のうち4つが建設系職業で占められており、1位の建設躯体工事は8.10倍、建築・土木・測量技術者は7.05倍に達しています。
求人はあふれているのに、なぜ人が集まらないのか。背景には担い手の高齢化があります。
国土交通白書2025によると、2025年時点ですでに建設技能労働者の約半数が50歳以上。
建設技能労働者数は5年ごとに約7〜8%ずつ減少する見込みで、生産性向上施策を講じても2030年以降も需給ギャップは解消されないと推計されています。
さらに、中小建設業(社員5〜100名)対象の調査(クラフトバンク総研・2025年)では、人材採用の課題として「応募がない」と回答した企業が33%、「採用活動をしていない」企業が22%にのぼり、小規模な工務店ほど採用の停滞が顕著であることがわかっています。
不動産業界の現状
不動産業界も同様です。全日本不動産協会・全日みらい研究所が2025年4月に発表した調査では、15〜39歳の若者の8割超が不動産業への就業に「興味がない」と回答しています。
その理由の上位には「仕事内容の魅力不足」「成果主義への懸念」「社会的イメージの悪さ」が挙がっており、業界そのものへのイメージが採用の壁になっている実態が浮き彫りになっています。
また、doda(2024年6月)によると、不動産業界の転職求人倍率は5.58倍と高水準で推移しており、求人側の競争が激しい状態が続いています。
「待つ採用」の限界
これらのデータが示すのは、「求人票を出して待っていれば人が来る時代は終わった」という現実です。
求人はあっても応募がない。応募があっても自社に合う人材ではない。
そのような状況が慢性化している企業に共通しているのは、「自社がどんな会社で、何のために存在しているのか」が、求職者に伝わっていないという点です。
予算も含めた採用計画、求める人物像の作成、採用職種の決定、スケジュール策定など、検討事項も多い採用計画。
「採用計画の遂行」から考えていると、「ターゲット(=求職者)から見て魅力的か」という視点がついつい欠落してしまいがちになります。
だからこそ、採用活動をブランディングの視点で捉え直す「採用ブランディング」が、今、工務店・不動産会社に求められているのです。
参照①:国土交通白書2025「第1節 担い手不足等によるサービスの供給制約」
参照②:リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査(2027年卒)」
参照④:クラフトバンク総研「中小建設業の人手不足・賃上げに関する調査」(2025年)
2,採用市場が求めるもの|新卒・中途、どちらも「あり方」が問われる時代へ
採用ブランディングを考える上で、現代の採用市場の変化を理解しておく必要があります。
新卒・中途、それぞれの採用で求められるものは異なりますが、どちらにも共通する課題が浮き彫りになっています。
学生が「働くイメージ」を持てるかどうかは、理念の伝わり方で決まる
リクルートマネジメントソリューションズが2026年卒1,008名を対象に実施した調査(2025年12月発表)によると、内定受諾の最終的な決め手は「自分が働くイメージを持てるか・安心できるか」へとシフトしています。また同調査では、「社員や社風」は最終的な決め手から、応募前の早い段階で学生を惹きつけ、企業を絞り込む要素へと変化していると分析しています。
つまり、理念・社風・ビジョンの発信は、学生が会社を探し・リサーチしている最も早い段階で参照されるものです。正しく発信していなければ、そもそも出会うことすらできません。
さらに、学情が2025年卒を対象に行ったSDGs調査では、「企業がSDGsに取り組んでいることを知ると志望度が上がる」と回答した学生が7割を超えています。
UNIIDEOがこれまで工務店・不動産会社の採用ブランディングを支援してきた現場感としても、事業の強みや特徴よりも、企業理念に表れる社会的意義への共感が、学生の企業選びに影響を与えていると感じる場面が増えています。
「理念があるか」「それを自分たちの言葉でしっかり語れているか」「伝えるコンテンツが整っているか」——この3点が、今の新卒採用において問われているのです。
中途採用|「条件で集めても、ミスマッチで失う」
一方、中途採用市場ではどうでしょうか。
中途採用においては、給与・条件面が転職先を決める大きな要素であることは事実です。
しかし、問題はその後にあります。
マイナビ「中途採用状況調査2025年版」では、「選考時に離職リスクを懸念しながらも採用したが、結果として離職となった」ケースを「やっぱり離職」と定義し、その実態を調査しています。
同調査によると、「やっぱり離職」の要因として「仕事内容のミスマッチ(24.5%)」が最多で、「社風・仕事文化とのミスマッチ(18.7%)」が続いています。
「仕事内容のミスマッチ」の背景には、入社前に企業の理念・ビジョン・働き方が十分に伝わっていなかったことが実は影響していると考えることが出来ます。
企業の存在価値や理念が正しく伝わっているからこそ、求職者は「なぜこの会社でこの仕事をするのか」を腑に落とした上で入社できます。
逆に、理念が伝わらないまま職種・条件だけで入社を決めた場合、会社の価値観や文化とのズレが後から表面化し、早期離職につながりやすくなります。
さらに、不動産・建設・住宅関連業種では2024年に中途採用で1人以上採用できた企業が76.5%と全体より10ポイント以上低く、採用そのものが難しい実態もあります。
条件面での訴求だけでは、経験者や有能な人材を「採用」できても「定着」させられない。
だからこそ、「この会社はどんな価値観で、何のために働いているのか」を一貫して発信し続けることが、中途採用においても不可欠なのです。
新卒・中途に共通する解決策
新卒と中途では、企業選びの決め手も、採用における課題の性質も異なります。
新卒は「理念・社風が伝わらなければそもそも出会えない」、中途は「条件で集めても価値観が伝わらなければ定着しない」——課題の現れ方は違いますが、根本には共通する問いがあります。
「自社はどんな会社で、何のために存在しているのか」を、採用活動の入口から一貫して発信し続けること。
それが新卒・中途を問わず、採用ブランディングの出発点です。
参照①:リクルートマネジメントソリューションズ「2026年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」(2025年12月)
3,採用ブランディングとは
採用ブランディングとは、自社の存在価値や理念・社風を正しく伝えることで「この会社で働きたい」と共感してくれる求職者とつながることを目的とした、ブランド戦略を採用活動に当てはめた手法です。
人事・採用担当者の視点で言い換えると、「採用の問題を、採用活動の中だけで解決しようとしない」という考え方の転換です。
求人票の改善・媒体の見直し・面接のトレーニングといった採用プロセスの最適化は重要ですが、それだけでは根本的な課題は解決しません。
「なぜ応募が来ないのか」「なぜ入社後に早期離職するのか」——その答えの多くは、採用活動の外側、つまり「会社そのものが何者で、何のために存在しているのか」が求職者に伝わっていないという点にあります。
今、人事・採用担当者に求められているのは、「採用活動の管理者」だけではなく、「自社のブランドを社外に伝える発信者」としての役割です。
ホームページ・採用ページ・SNS・社員の発言——あらゆる接点において、一貫した企業の「あり方」を伝え続けること。
それが採用ブランディングの本質であり、人事が担うべき重要な役割の一つです。
そのためには、経営層において、企業としての「ブランド」や「経営理念」を整えることからはじめます。
ワークショップを中心としたプログラムによって「ブランドプラン」を策定し、想われたい企業像を定めます。そしてターゲット(=求職者)に届けるメッセージを言語化していきます。
工務店、住宅・不動産企業の持つ価値観から、事業ごとの提供価値、仕事のやりがい、ワークスタイルや社内制度など、求める人物像とそこで働く社員の結びつきを強化するためのあらゆる情報を積極的に発信することが求められます。
4,採用ブランディングの目的と向き合う課題
採用ブランディングの目的は、「自社の価値観や理念に共鳴できる人材に、自社の存在を正しく伝え、出会うこと」です。
単に応募数を増やすことではなく、自社の存在価値を正しく理解した上で共鳴してくれる人材と、長期的に関係を築いていくことにあります。
その目的を達成するために、採用ブランディングは多くの工務店・不動産会社が慢性的に抱える以下の3つの課題に向き合います。
課題① 「応募への反応が少ない」
求人票を出しても反応が少ない。この状態は、自社の魅力や存在意義が求職者に正しく届いていないことを意味します。求職者は会社を探し・リサーチしている最も早い段階で、その会社の存在価値や理念・社風を参照しています。発信していなければ出会うことすらできず、発信していても伝わり方が不十分であれば、共鳴する前に候補から外れてしまいます。採用ブランディングによって自社の存在価値を正しく・一貫して伝えることで、理念に共鳴した求職者が自然に集まる状態をつくります。
課題② 「マッチしない」
応募はあっても、自社が求める人物像とかけ離れている。これは、発信しているメッセージと求める人材像がズレていることが原因です。採用ブランディングによってターゲットを明確にし、届けるメッセージを言語化することで、マッチ度の高い求職者との接点を増やします。
課題③ 「すぐ辞める」
採用できても早期離職が続く。入社後のミスマッチは、入社前に「この会社の価値観・働き方」が十分に伝わっていなかったことに起因します。採用ブランディングによって入社前から一貫した企業の「あり方」を伝えることが、ミスマッチを未然に防ぐ安全弁になります。
5,採用ブランディングのメリット
採用ブランディングを構築するメリットは大きく2つあります。
メリット① マッチング度の高い人材が集まりやすくなる
採用ブランディングによって自社のビジョン・価値観・働き方が求職者に正確に伝わることで、「この会社で働きたい」と共感した人材が集まるようになります。その結果、入社後のミスマッチが減り、早期離職率の低下と定着率の向上につながります。採用コストの観点でも、求人媒体への大量出稿に頼らずに適切な人材を獲得できるため、長期的な効率化が期待できます。
メリット② 社員の提供価値と組織力が向上する
企業への愛着心を持って入社した人材は、仕事への主体性と誇りが高く、顧客への提供価値が向上します。さらに、そのような社員が発信するSNSや口コミは、次の採用にも好循環をもたらします。「いい会社だから紹介したい」という社員の自発的な発信が、採用ブランディングをさらに強化するのです。
採用ブランディングがもたらす最も本質的な効果は、「採用コストの削減」や「応募数の増加」という数字の変化だけではありません。
自社の理念・価値観に共感した人材が集まり、その人材が誇りを持って働き、顧客への価値提供が高まり、さらにその評判が次の採用を呼ぶ——という好循環が、短期・中期・長期にわたって企業に積み重なっていきます。
採用ブランディングは、採用活動の改善策ではなく、企業が持続的に成長するための経営基盤そのものと言えます。
6,採用ブランディング成功事例
社会環境などの変化により、これまでのように欲しい人材を「待つ採用」では人材を確保できない可能性があります。
人材不足によって企業衰退をしないためにも戦略的に採用ブランディングを行い、この工務店、住宅・不動産企業で働きたいと想うひとをつくる「攻める採用」が必要ではないでしょうか。
採用ブランディングを実践した企業からは、以下のような声も届いています。
クライアントボイス① 求職者の「質」が変わった
「さらに大きな変化を感じるのは、採用の場面においてです。これまでは当社が何をする会社なのかよく分からずやってくる求職者も多かったのですが、今はどんな会社でどう世の中の役に立っているのかを理解したうえで、当社を志して来てくれます。面接で話をしていても、ちゃんと当社のことを分かってくれていると思って嬉しく感じますね。(中略)ホームページを見ただけで会社の魅力や価値がしっかり伝わるのが、ブランディングの力なんだと実感しました。」
クライアントボイス② 「工務店らしくない」会社として新卒採用に成功
「新卒採用の成功が一つの現れだと思います。(中略)いい意味で『工務店らしくない』会社というイメージを、新卒の子たちに向けて発信できたんです。(中略)私たちは大企業ではないので、特に新卒の子たちに仕事のイメージを持ってもらうためにも、会社のブランドをしっかり発信することが大切なんだと実感しました。(中略)これから入社してくる子たちにも、インスピレーションというか、働く動機を与えられるんじゃないでしょうか。」

7,まとめ
採用ブランディングは、「自社の価値観や理念に共鳴できる人材と出会うため」の活動であると同時に、「自社がどんな会社であるか」を社会に伝え続けるブランディング活動そのものです。
求人を出しても応募がない、採用できても早期離職が続く——そのような課題の根本には、多くの場合、「自社の魅力が求職者に正しく伝わっていない」という問題があります。
採用ブランディングは一朝一夕で結果が出るものではありません。
しかし、ブランドの軸を整え、インナーブランディングで社内に浸透させ、採用の場でも一貫したメッセージを発信し続けることで、「この会社で働きたい」と思う人材が自然に集まる状態をつくることができます。
工務店・不動産会社にとって、人材はサービスの質そのものを左右する最重要資産です。
採用を「コストとスケジュールの問題」として捉えるのではなく、「どんな会社として選ばれたいか」というブランディングの視点で捉え直すことが、本当に欲しい人材と出会うための第一歩です。
本記事が貴社の採用戦略のヒントになれば幸いです。
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Q1. 採用ブランディングとは何ですか?
A1. 自社の存在価値や理念・社風を正しく伝えることで「この会社で働きたい」と共感してくれる求職者とつながることを目的とした、ブランド戦略を採用活動に当てはめた手法です。採用の問題を採用活動の中だけで解決しようとするのではなく、「自社がどんな会社で、何のために存在しているのか」を一貫して発信し続けることが出発点になります。
Q2. 採用ブランディングに取り組むとどんな効果がありますか?
A2. 大きく2つの効果があります。①自社の価値観・理念に共鳴した求職者が集まりやすくなり、入社後のミスマッチが減り定着率の向上につながる、②企業への愛着を持った人材が増えることで、社員の主体性と顧客への提供価値が向上する、です。ただし、ブランドの認知はじわじわと広がるものであるため、従来の採用手法と並行しながら長期的な視点で取り組むことが重要です。
Q3. 採用ブランディングはどこから始めればよいですか?
A3. まず「自社はどんな存在価値を持ち、何のために存在しているのか」を言語化することが出発点です。ミッション・ビジョン・バリューを整理し、自社の理念・社風・働き方を採用コンテンツとして発信できる状態をつくることから始めてください。インナーブランディング(社員への浸透)が先行していると、採用ブランディングの説得力がさらに高まります。
Q4. 大企業でなくても採用ブランディングは有効ですか?
A4. むしろ中小の工務店・不動産会社にこそ有効です。大企業と知名度で競うのではなく、「自社ならではの存在意義・社会への貢献・働き方」を発信することで、その価値観に共鳴した人材と出会えます。実際にUNIIDEOの支援先では、ブランディングを通じて新卒採用に成功した事例が生まれています。
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